【メイドインアビス】深界六層の絶望と慈愛。The Evpatoria Reportが響く「情景」の記録

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『メイドインアビス』深界6層の絶望と慈愛。The Evpatoria Reportが響く「情景」の記録。 Music × Anime

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⚠️ 【ネタバレ注意】
本記事は『メイドインアビス』の一部ストーリーや登場人物に触れる箇所があります。物語の決定的な核心(ネタバレ)には触れないよう配慮していますが、未視聴の方はご留意の上お読みください。

残酷で無情な世界に響く、光と影の残響

今回は少し趣向を変えて、あるアニメ作品にフォーカスしてみたいと思う。

『メイドインアビス』だ。

神の手によって穿たれたかのような巨大な大穴「アビス」。その底には、誰も知らない未知の世界が広がっている。本作は、この大穴にロマンを抱いた主人公・リコが真実を求めて奈落を降りていき、残酷で容赦のない現実を生々しく描き出す物語だ。

このブログの趣旨は、誰もが体験した「あの光景」を、音を通じて共感すること。

今回もそのスタンスに則り、メイドインアビスの深い世界に響く「音」を提案したい。

深界六層、ヴエコという女性の「祈り」と『Old Stories』

深界六層。そこは、降り立った者が二度と地上へ生還することのできない「還らずの都」。
この地でかつて「ガンジャ隊」として黄金郷を目指した女性、ヴエコ(ヴエロエルコ)に焦点を当てたい。

ヴエコは、控えめでか細い話し方をする女性だ。

とても人間らしい弱さと強さを併せ持つ彼女が、あるシーンで、つぶやくように語る場面がある。それは、残酷な世界を生き抜く人間の、あまりにもエモーショナルな語りだ。一歩一歩踏みしめる足取り、その表情、か細い声。そこには絶望と後悔、そして希望と慈愛という相反するはずの感情が一つに溶け合っている。

このヴエコがイルミューイへの想いを語る時、強く印象に残る音楽がある。Kevin Penkin氏による名曲『Old Stories』だ。

本ブログのメインテーマであるポストロックとは異なるが、最高にエモーショナルで、誰もが涙を流したであろうこの曲にもぜひ触れておきたい。

ピアノやストリングスが優しくも切ないメロディを奏でるのだが、どうしても深界六層の情景が目に浮かんでしまうため、どこか残酷にも聴こえてしまう。

そして何より、本当に深界六層の大空間に響いているかのような見事な音響が作り上げられている。このサウンドトラックはウィーンの「Synchron Stage Vienna」というホールで録音されており、その極上の環境が、この深く美しいリバーブを生み出しているのだろう。

情景に重なる轟音:The Evpatoria Report / 『Taijin Kyofusho』

劇中のシーンに『Old Stories』が最高にマッチしているのは言うまでもない。

だが、僕にはその語りの奥底にある渦巻くような想いが、もう一つの「音の情景」として鳴り響いて止まないのだ。

この曲から、僕は深界六層の残酷さや嘆き、黒く濁った負の感情を思い描いてしまう。

しかし、その濁流の中で鳴り響くギターの音色からは、なぜか不思議な優しさや希望を感じるのだ。それはまるで、人間臭い絶望と慈愛を同時に見せてくれる、ヴエコの表情そのもののようだ。

曲の終盤、まるで世界への絶望を叫ぶかのように刻まれる、ディストーションの効いた激しいトレモロ奏法。その叫びは、ヴエコの心の声なのか、それともアビスという呪いそのものなのか。

慈愛を照らす音:Seas of Years / 『Lighthouse』

だが、『Taijin Kyofusho』の轟音だけでは、彼女のすべてを語ることはできない。

彼女から放たれる言葉の断片は、決して黒く濁ったものだけではないからだ。そこには、確かに「慈愛」が宿っている。その側面は、また別の音で情景が見えてくる。

ヴエコの内面にある温かい想いは、この曲で奏でられる深いリバーブのギターサウンドのように響き、僕らに届く。クリーントーンの中にわずかに含まれる歪みが、彼女が生きた「人間味」を教えてくれる。

明るい音色の中にどこか寂しさを内包したこの響きこそ、『Taijin Kyofusho』では見えなかった、もう一人の彼女の情景だ。

深界六層の空間を耳元に再現する「Sennheiser HD 599」

『Taijin Kyofusho』や『Lighthouse』が持つ空間の広がり、そして『Old Stories』の深い残響を余すことなく体験するなら、当ブログの絶対的定番である「Sennheiser HD 599」を強くおすすめしたい。

開放型ヘッドホンの最大のメリットは、音が自然に抜けていくことによる「残響音の消え際」の美しさにある。そして何より、Sennheiser独自の「E.A.R.(Ergonomic Acoustic Refinement)テクノロジー」がこの作品において凄まじい効果を発揮する。ドライバー(振動板)が耳に対してわずかに傾けて配置されているため、音が耳元に張り付かず、空間の奥底から自然に響いてくるのだ。

さらに、計算し尽くされたオープンバックのメッシュ構造により、アンプ不要の直挿しでも音が淀みなく外へ抜けていく。そのため、これらの楽曲が生み出す立体的で正確な空間、つまり「深界六層の底知れぬ奥行き」をそのまま耳元で表現できるわけだ。

あの深界六層の巨大な空間に自分が立っているかのように、美しく残酷な残響が耳元で再現される。ヴエコが最後にファプタに対し、イルミューイへの想いを伝えた時の「零れ落ちる涙の音」まで聞こえてくるような、極上の没入感を約束してくれるはずだ。

音と情景が溶け合う場所

僕が敬愛する envy や Godspeed You! Black Emperor は、音楽というアプローチで唯一無二の世界を構築している。

対して『メイドインアビス』は、アニメというアプローチで、緻密な音遣いや背景描写によって唯一無二の世界を作り上げている。

表現の方法は違えど、そこに宿る精神は同じだ。

音と情景はどうしてこうも、僕たちの心を激しく揺さぶるのだろうか。アビスの底から響く音楽に耳を澄ませながら、僕はまた、その答えを探し続けている。

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©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

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