これまでの記事で紹介してきたポストロックバンド。なぜこれほどまでにゲーム世界の情景とマッチするのか。それは、ポストロックが「枠に収まらないロック」だからだ。
一般的なロックにはAメロ・Bメロ・サビといった定型があるが、ポストロックは違う。まるで物語のように展開し、結末を知らない小説を読み進めるようなスリルがある。そんな「ロックの先のロック」を体現するバンド、Russian Circlesを紹介したい。
3ピースの限界を突破する機材とリズムの魔術
シカゴを拠点とするRussian Circlesは、ギターのマイク、ベースのブライアン、ドラムのデイブという3ピースバンドだ。彼らのサウンドが異常なほど奥行きがあるのは、「音の積み上げ」だけでなく、デイブのドラミングが「第4、第5の楽器」として機能しているからに他ならない。
【ルーパーによるサウンドの構築】
ギターのマイクはElectro-Harmonix 720 Stereo Looperを駆使し、複雑なフレーズを重ねる。3ピースのバンドを4ピースのように演出するその手腕は、楽曲の骨格を成している。
【バイアンプがもたらす5ピースの重圧】
ベースのブライアンは「バイアンプ」という手法で、低音と中高音を別々に出力。これによってベースがギターのように唸りを上げ、5ピース相当の厚みへと昇華される。
【デイブによる「攻撃的」なドラミング】
そして、この重厚な音像を制御し、同時に加速させるのがドラムのデイブだ。彼のドラミングは驚くほどテクニカルで、変拍子を自在に操りながら、ルーパーが作る静謐な空間を「激しい戦場」へと塗り替えていく。シンプルなリズムでグルーヴを支えたかと思えば、次の瞬間には怒涛のフィルインで楽曲の情景を劇的に変化させる。彼の正確無比かつ攻撃的なリズムこそが、このバンドが「ポストロック界の重戦車」と呼ばれる所以なのだ。
『Mládek』—— 細胞の誕生と敵細胞からの侵略
ライブアルバム”Live at Dunk! Fest”に収録されたこの曲。その構成を解剖してみよう。
- 序章: 誕生(ルーパーによるメロディ構築)
- 第2章(3:42~): 不穏(低音の引きずるようなサウンド)
- 第3章(4:07~): 変化(デイブのテクニカルなドラムが楽曲を牽引)
- 第4章(4:40~): 抵抗
- 第5章(5:05~): 浸食(ベースの魔術的幻惑とドラムの空間操作)
- 第6章(6:33~): 再起(ライブで体に響かせたい力強いリズム)
- 第7章(7:42~): 復活(テーマの伏線回収)
序盤の明るいメロディが、バイアンプによる歪んだ低音に浸食され、不穏な世界へと変貌する。特に第3章以降、シンプルなリズムから複雑なパターンへと切り替わるデイブのドラムが、物語に急激な緊張感を与えているのが聴きどころだ。
『youngblood』—— マルチエンディングを往くプレイヤー
ライブアルバム”Live at Dunk! Fest”より。静けさの中にシリアスな思いが宿る一曲だ。
- 序章: 決意と鼓動(タッピングによるメロディ)
- 第2章(3:00~): 激突(ブリッジミュートの歪みと強烈なドラム)
- 第3章(4:19~): 一時休戦(クランチギターの緊張感)
- 第4章(4:43~): エンディングA(カタルシスを感じる開放)
- 第5章(5:27~): 別展開(ルーパーの複雑な重なり)
- 第6章(6:23~): エンディングB(重厚なディストーション)
- 第7章(7:54~): エピローグ
中盤で一度エンディングを迎えたかに見えて、雲行きが変わり別の結末へ向かうマルチエンディングのような構成。特に第4章の最高潮で、あえてバイアンプを抑え、シンプルかつテクニカルな低音とドラムだけで強烈なグルーヴを生み出す瞬間は圧巻だ。
ライブ盤が証明する「天才」の証明
今回紹介した『Live at Dunk! Fest』の音源を聴けば、彼らが3人という最小単位で、これほどまでに緻密な音の建築をライブで行っている事実に驚くはずだ。
マイク、ブライアン、そしてデイブ。この3人がルーパーとバイアンプ、そして卓越したリズムで紡ぎ出す世界には、決まった型などない。 天才Russian Circlesが見せてくれる「深淵」を、ぜひ肌で体感していただきたい。
© Russian Circles
© Dunk! Records
アーティストの楽曲は、Amazon Musicでも幅広く配信されています。 まずは無料体験で、高音質な『音』の深淵に触れてみてください。詳細は下のバナーをクリック!



コメント