本記事は『NieR:Automata』の物語の根幹に関わる重大なネタバレを含みます。未プレイの方は、ぜひ一度その目で世界の終わりを見届けてから、この「音」の情景に触れてみてください。
NieR:Automata:退廃と祈りの物語
2017年にスクウェア・エニックスからリリースされたアクションRPG、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。
独特で退廃的な世界観、そして帆足圭吾氏や岡部啓一氏らによる個性豊かな音楽は、今もなお多くのファンの心を掴んで離さない。
このゲームの音楽は、それ自体が完成された芸術であり、世界観にこれ以上ないほどマッチしている。その上で、今回はあえて「ポストロック」という視点から、この世界の二つの廃墟に流れる情景を読み解いてみたい。
二つの廃墟:生命の残り香と、無機質な虚無
本作は、人類が月へと逃げ延びた後の地球を描くディストピアだ。地上に広がるのは、人の存在を失い、朽ち果てた廃墟。
僕は、劇中に登場する二つの場所を、Pray for Soundというバンドの楽曲とリンクさせてみた。
一つ目は、緑に飲み込まれた「ショッピングモール跡地」。

二つ目は、砂漠に突如として現れる「マンモス団地」。

この二つの廃墟は、同じ「人の住まい」の形をしていながら、その本質には決定的な差異が存在している。
「模倣」という哀れな祈り
ショッピングモールは、かつて人類がその繁栄を謳歌した「本物の跡地」だ。
対してマンモス団地は、エイリアンの兵器である「機械生命体」が、旧世界の人間を模倣し、自ら作り上げた「偽物の街」である。
彼らに自意識はないはずだった。しかし、バグを起こした彼らは人間を模倣し、集団で生活を真似、ついにはこの巨大な団地群を築き上げた。
そこに人類の歴史は存在しない。あるのは「人間になりたい」という、プログラムの枠を超えた歪な渇望だけだ。
それぞれの情景に重なる音
僕は、この「本物」と「模倣」の対比を、Pray for Soundの二つの名曲に重ねる。
ショッピングモール × 『I Have Seen Hell and It’s White』
廃墟の魅力は、その場所に蓄積された「時間」だ。
植物が建物を飲み込み、エスカレーターが錆びついても、そこにはかつての人々の生活が確かにあった。
曲の冒頭、クランチ気味に歪んだギターの力強いリズムは、かつてこの地にあった都会の喧騒を想起させる。しかし、3:00を過ぎたあたりから情景は一変する。
歪みは消え、澄み渡るクリーンサウンドがアンビエントのように響き渡る。それは、人の感情の匂いが消え、すべてが自然の静寂へと還っていく、廃墟ならではの美しき崩壊だ。
4:02からのクリーントーンによるブリッジミュートは、2Bたちがこの孤独な世界を歩む「寂しさと覚悟」にシンクロし、胸を締め付ける。
マンモス団地 × 『Day Bringer』
この曲は、冒頭からNieR:Automataの空気感そのものだ。都会の喧騒を思わせるノイズの中、鉄琴のような金属的なメロディが刻まれる。
次第に音に歪みが混ざる様は、同じ行動を延々と繰り返す機械生命体のバグ、順応しようとしても壊れゆく理性を象徴している。
何より、中盤から入る神秘的なコーラスが楽器と溶け合う瞬間、あの「アダムの誕生」がフラッシュバックする。
無数の機械生命体が寄り集まり、胎動し、苦痛のような叫びを上げながら、一人の「人間」の形(アダム)を産み落とすシーン。
「人間になりたい」という祈りにも似た絶叫が、この曲の重厚な音像と重なり、本作のサウンド『愚カシイ兵器』にも通ずる孤独と悲哀を浮き彫りにする。
人類という名の「神」を求めて
旧約聖書の創世記において、神ヤハウェは土からアダムを作り出した。
NieR:Automataの世界において、マンモス団地はエデンの園であり、すでに存在しない人類こそが、機械生命体にとっての「神」なのだ。
人類が神殿を建てて神を模倣したように、彼らもまた、団地を建てて神(人間)を模倣した。
僕たち人類の目から見れば、それは哀れで滑稽な行動かもしれない。しかし、もし機械生命体の目線でこの『Day Bringer』を聴いたなら、それは絶望ではなく、「神への到達」を祝う歓喜の歌に聞こえたのだろうか?
そんな問いを投げかけたくなるほど、この楽曲はNieR:Automataの深淵に寄り添っている。
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© Pray for Sound
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