ポストロックという至高――視界を塗り替える「情景」との記録

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ポストロックのおすすめバンドを紹介するSG-Walkerのアイキャッチ画像 Music

僕に二度目の情景を見せてくれた音楽

mogwaiと出会ったのは2006年頃。

当時どういう経緯だったか記憶は定かではないが、彼らの名盤『Rock Action』に収録された『2 Rights Make 1 wrong』を聴いた。

10分にも及ぶ長尺の曲。しかし、その衝撃は今も鮮明に覚えている。

かつて友人のバンドが方針転換をした瞬間に感じた、あの「音が情景として脳内に流れ込んでくる」感覚。あの日以来、僕は音楽を通じて二度目の「情景」を、この曲の中に描き出すことができたのだ。

暗闇に差し込んだ光―音が教えてくれた情景 | SG-Walker.Japan

以来、僕は『2 Rights Make 1 wrong』を何度も、何度も繰り返し聴き続けた。

『2 Rights Make 1 wrong』の感動を求めて

一方で、当時の僕はmogwai以外の「ポストロック」に辿り着くことができなかった。

厳密に言えば、envyは聴いていた。だが、僕にとってenvyは「ポストロック」というジャンルではなかった。彼らはハードコアの地平から産み出された独自の「言葉」と「叫び」を放つ異端であり、envyenvyでしかなかったからだ。

当時の僕は、mogwaienvyも、ジャンル名ではなく一つの「個体」として捉えていた。

それゆえに、他の良質なポストロックバンドを探し出す術を知らなかったのだ。どれほどmogwaiの新譜を追っても、あの『2 Rights Make 1 wrong』を超え、視界を塗り替えるほどの衝撃には出会えない日々が続いていた。

ストリーミングサービスという新たな扉

転機は2015年、Apple Musicのサービス開始だった。

それまでは、レコード屋やiTunesで資金の許す限り買い漁るか、レンタルに頼るしかなかった。しかし、レンタル店にポストロックのようなニッチなジャンルが置いてあるはずもない。

「定額で聴き放題」という魔法は、僕の中にあった未知のバンドへの扉をこじ開けた。

資金的な制約から解放され、出会いの速度が急加速する。そこで僕は、3度目の邂逅を果たすことになる。

その名は、Godspeed You! Black Emperor (GY!BE)

GY!BEとの出会い、それは『火の鳥』の羽ばたき(Godspeed You! Black Emperor)

GY!BEのアルバム『Lift Your Skinny Fists Like Antennas To Heaven』に収録された『sleep』を聴いた瞬間、僕は震えた。

mogwaiの『2 Rights Make 1 wrong』が、エリュシオン(ギリシャ神話の楽園)やエジプト神話の「葦の原野」のように、神々しさと輝きに満ちた情景だとするならば、『sleep』はそれとは全く異質なものだった。

それは、太古の世界から「数千、数億という年月の経過」を俯瞰して観察しているような、孤独で、かつ巨大な神の視点。僕の脳裏には、手塚治虫の『火の鳥』が宇宙の深淵を羽ばたくイメージが重なった。

こうして僕は、ようやく「ポストロック」という広大な宇宙の存在を知り、多くのバンドを「観測」し始めることができたのだ。

ポストロック界の巨匠たち

ポストロックの世界は想像以上に深いが、その入り口には常に巨匠たちが立っている。

Sigur Rós、Explosions in the Sky、そして先のGodspeed You! Black Emperor

彼らの多くはインストゥルメンタル(歌なし)だが、それは些細なことだ。ボーカルだって一つの楽器に過ぎない。大切なのは、求める世界観が表現されているかどうか。

メジャーなポストロックバンドが奏でる音は、僕が追い求めてきた「情景」を、何度でも鮮烈に見せてくれる。

僕が選ぶ「至高」のポストロックバンド5選

今、僕が特におすすめしたい5つのバンドを紹介する。

  • Pray for Sound
    ―― 光が降り注ぐような、多幸感溢れるメロディック・ポストロック
    僕の好みが凝縮されたバンドだ。その光溢れる音楽性は、聴く者の心に温かな情景を映し出す。彼らのサウンドの要は、空間系エフェクターの最高峰「strymon BigSky」などが生み出す、天国のように広く深いリバーブの残響音にある。この音色は、『アサシン クリード オリジンズ』で星空を見上げる砂漠の静寂や、『NieR:Automata』の廃墟に射し込む一筋の光と完璧にシンクロする。
    🔗 [あわせて読みたい:『NieR:Automata』ショッピングモール跡地の情景とPray for Sound]

  • Caspian
    ―― 緻密なアンサンブルが織りなす、壮大で叙情的な音の叙事詩
    時に暗く、時に美しく。彼らの作り上げる緻密なアンサンブルは、聴き手をかつて経験したことのない物語の深淵へと誘う。ディレイのフィードバックが意識の混濁のように折り重なり、繊細なアルペジオがやがて重厚な轟音へと飲み込まれていく展開は圧巻だ。この「喪失の美」は、『ホロウナイト』の涙の都で、永遠に降り続く雨の中に佇む孤独な情景を痛烈に呼び起こす。
    🔗 [あわせて読みたい:涙の都に溺れて――ホロウナイトとCaspian『Rioseco』の絶望]

  • Russian Circles
    ―― ヘヴィな重低音とインテリジェンスが融合した、漆黒のインスト・メタル
    圧倒的な音圧。ルーパーを駆使して緻密なフレーズを重ね、ベースのバイアンプ接続によって5ピースバンドに匹敵する重圧を生み出す。そこへ変拍子を自在に操るテクニカルなドラムが加わることで、静謐な空間は一瞬にして「激しい戦場」へと塗り替えられる。そのギターサウンドに乗せられたエモーションは、荒廃したディストピアを突き進む重戦車のように、聴き手の脳内に強制的に叩き込まれるのだ。
    🔗 [あわせて読みたい:Russian Circles――3ピースが生み出す重戦車の物語]

  • If These Trees Could Talk
    ―― 深い森の奥底から響くような、神秘的で重厚なギター・オーケストラ
    トリプルギターによる空間の使い方が秀逸だ。3本のギターが複雑にレイヤーされ、まるで北欧神話のユグドラシルのように深く、どこまでも広がる音の森を形成している。深い森の奥行きと神秘性を感じさせるその重厚なサウンドは、未知の自然環境や未踏の遺跡を探索する際の、あの畏怖と没入感そのものだ。

  • Meniscus
    ―― 視界をジャックする、圧倒的な没入感のシネマティック・サウンド
    ドラマティックな展開と、予想を裏切る音の反響とダイナミクス。広大な宇宙空間にたった一人取り残されたような静寂から、未知の惑星への着陸を思わせる轟音のクライマックスへ。感情を激しく揺さぶるその旋律は、もはや音楽を聴いているというより、一本の壮大なSF映画を体験しているかのような錯覚に陥る。

If These Trees Could Talk および Meniscusは今後ゲームとのシンクロを記事にしたいと考えている。ご期待を。

ポストロックは、「ロックの先を求めた者のロック」だ。

それはこれからも進化し続け、僕たちに新しい情景を見せてくれるだろう。

このポストロックというジャンルが持つ深い魅力については、また別の機会にじっくりと考察してみたい。

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