霧に沈む失われた古の知識――『アサシン クリード ヴァルハラ』ストーンヘンジとRed Sparowesの轟音

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霧に沈む失われた古の知識。アサシンクリードヴァルハラのストーンヘンジとRedSparowesの轟音 Music × Game

⚠️ 【ネタバレ注意】
本記事は『アサシン クリード ヴァルハラ』における特定のロケーション(ハムトンシャー / ストーンヘンジ)に関する言及を含みます。探索の楽しみを奪う可能性がありますのでご注意ください。

9世紀のイングランドは、スカンディナヴィア半島から渡ってきたヴァイキングたちの略奪と戦火に包まれていた 。

過去の当ブログの記事でもローマの廃墟について触れたが、当時のイングランドはローマ帝国撤退後、約400年もの間、文明の進化が事実上ストップしていた状態にあった 。

最先端であったローマの設備がとうの昔に遺跡となる中、そのイングランドの大地に、ローマとは全く異なる異質の遺跡が埋もれるように存在している。「ストーンヘンジ」だ 。

アサシンクリードヴァルハラのハムトンシャーにあるストーンヘンジ。何を目的にこの設備が作られたのだろうか。
アサシンクリードヴァルハラのハムトンシャーにあるストーンヘンジ。何を目的にこの設備が作られたのだろうか。

今回はこのストーンヘンジが放つ悠久の沈黙に、USポストメタルの重鎮、Red Sparowesの楽曲を合わせてみたい。

曲名は『Annihilate the Sparrow, That Stealer of Seed, and Our Harvests Will Abound; We Will Watch Our Wealth Flood In』(以降、あまりに長いため『Annihilate the Sparrow〜』と呼称する)

💡 読者への案内
ここからは、ぜひ下の楽曲を再生しながら読み進めてみてください。ハムトンシャーのストーンヘンジの重厚な存在感はRed Sparowesの『Annihilate the Sparrow〜』のウォール・オブ・サウンドがより一層情景を深堀するだろう。

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「巨人の仕業」と、知識の逆転現象

『アサシン クリード ヴァルハラ』において、ストーンヘンジはイングランド南部のハムトンシャー(史実におけるウィルトシャー)の霧深い大地にひっそりと、しかし異様な存在感を放って屹立している 。

当時の地元民であるアングロ・サクソン人たちは、残されたこの巨大な遺跡を「巨人の仕業」として畏れていたという文献が残っている 。おそらく、海を渡ってきたデーン人やノルウェー人のエイヴォルたちも、北欧神話に登場する「霜の巨人」を連想し、同じような畏れを抱いていたに違いない 。

現代の調査において、ストーンヘンジは紀元前3000年頃から約2000年かけて建造された複合体であり、シャーマン的なヒーリング施設、あるいは「高度な天文台」であったという説が有力視されている 。

ストーンヘンジの上空視点。この光から暦を読んでいたのだろうか?
ストーンヘンジの上空視点。この光から暦を読んでいたのだろうか?

もしこれが天文台だったとすると、非常に興味深い「逆転現象」が浮かび上がってくる 。

当時のアングロ・サクソン人は、星空を「自分たちが住む世界(ミッダンゲアルド)を覆う、神が作った巨大な屋根」だと信じていた 。ヴァイキングたちもまた、上空には神々の国アースガルズがあり、星々はムスペルヘイムの火花だと信じていた 。

つまり、9世紀に生きる彼らよりも、その数千年前の「古代人」の方が、はるかに先進的な天文学の知見を持っていたことになるのだ

重鎮たちが鳴らす「古代の音の壁」

この「現代ではわかっているが、当時はその認識すらない」という圧倒的な知識のズレ、そして数千年の時の重みが、『Annihilate the Sparrow〜』の持つ叙情的でダークな展開と見事にリンクすると僕は考えている 。

Red Sparowesは、ISIS the BandやNeurosisといったポストメタル、ドゥームメタルの重鎮バンドの元メンバーが集結して結成されたバンドだ 。彼らが紡ぎ出すサウンドに、一切の妥協や隙はない 。

楽曲は、不穏で深い霧に包まれたような静かなイントロから始まる 。それはまさに、エイヴォルがハムトンシャーの深い霧を抜け、突如として目の前に現れた巨石群を見上げた時の息を呑む情景そのものだ。

やがてディストーションの効いた重厚なギターサウンドが重なり、空間系エフェクターが深い音の壁を立ち上げていく 。その圧倒的な重低音は、エイヴォルたちの理解を完全に超えた「数千年前の失われた古の知識の重み」となって、容赦なくプレイヤーにのしかかってくる。

失われた文明と、唐突な沈黙

終盤、轟音は一旦鳴りを潜め、静けさの中に響くギターのアルペジオがカタルシスへと展開を盛り上げる 。僕はここに、進化が止まり静寂に包まれたイングランドの「文明的静けさ」を感じる 。その後、哀愁を帯びた音階が壮大なスケールで広がるのだが、この楽曲はエンディングで「やや唐突に」終わる印象を持つ 。

実はこの楽曲の元々のコンセプトは、1950年代の中国をテーマにしたものだ 。

僕がストーンヘンジに抱いた情景とは一見異なるように思えるが 、根底にある「虚無感」は共通しているように思える。

かつて星の運行を読み解くほどの高度な知恵を持ち、自然と調和(あるいは支配)しようとした古代人たちは、なぜか姿を消し、後世の人々に「巨人の仕業」と恐れられる不気味な石の塔だけを残した。

楽曲の唐突な終わりは、栄華を極めたはずの古代文明が突如として途絶えた歴史の断絶であり、そしてエイヴォルがその場を立ち去った後、ストーンヘンジが再び「誰にも理解されない悠久の沈黙と霧の中」へと沈んでいく虚しさを表しているかのようだ。

ポストロックが持つ最大の魅力は、聴く者がどのような情景を描くかを委ねられていることにある 。彼らの鳴らす轟音が、あなた自身の頭の中にどんなイングランドの霧を描き出すのか、ぜひその耳で確かめてみてほしい。

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