【人喰いの大鷲トリコ】冷たい遺跡に芽生えた奇跡の温もり。大鷲と少年の絆をJakob『Laburnum』の揺らぎで描く

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「人喰いの大鷲トリコ」冷たい遺跡に芽生えた奇跡の温もり。大鷲と少年の絆をJakob『Laburnum』の揺らぎで描く。 Music × Game

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⚠️ 【微ネタバレ注意】
本記事では『人喰いの大鷲トリコ』のゲーム中盤以降で判明する大鷲の本来の役割や、世界観の背景設定について触れています。物語の決定的な結末には触れていませんが、予備知識なしでプレイしたい方はご留意の上お読みください。

『人喰い大鷲のトリコ』大鷲トリコと少年の絆が芽生えた最初の場所。
大鷲トリコと少年の絆が芽生えた最初の場所。はじめは黒い目が怖いが。

言葉のない遺跡と、恐ろしい「人喰い」の先入観

作中で多くを語らず、その世界の成り立ちや考察をプレイヤー自身の想像力に委ねるゲームがある。『人喰いの大鷲トリコ』もまさにそのスタイルを貫く傑作だ。

冒頭、プレイヤーに与えられる情報は極めて少ない。しかし、「大鷲は子供を攫う」「大鷲は人喰いである」という恐ろしい先入観だけは、強烈に植え付けられる。

そんな中で、たまたま出会った傷ついた大鷲(トリコ)と一人の少年が、巨大で冷たい遺跡からの脱出を試みる。その過程で少しずつ芽生えていく「言葉を持たない信頼関係」の情景に、僕はJakobの『Laburnum』という楽曲を重ねずにはいられないのだ。

偶然が生み出した奇跡と、温かな信頼の芽生え

本来、大鷲たちの使命は「人間の子供を攫い、谷の主へ捧げることで、自らのエネルギーである光の樽を機械的に得る」という非常に残酷なシステムの一部だった。

しかしトリコは、偶然にも高い場所から落下してツノが折れ、洗脳・制御用の装具が外れてしまう。この偶然の事故によって、トリコはシステムから外れ、一匹の「動物らしい情」を取り戻すことができたのだ。

この偶然が生み出した奇跡と、人喰いと恐れられていた大鷲が少年を背中に乗せ、不器用に、しかし優しく守り抜こうとする温かい情景。それこそが、『Laburnum』から滲み出るアナログで人間味のある響きと完全にリンクする。

『人喰い大鷲のトリコ』奥に見えるトリコ。ゲーム開始直後だが、もうすでに愛くるしい。
奥に見えるトリコ。ゲーム開始直後だが、もうすでに愛くるしい。

『Laburnum』が奏でる、冷たい石造りと温かな感情のコントラスト

Jakobは、1998年に結成されたニュージーランド出身の3ピース・ポストロックバンドだ。2003年リリースのアルバム『Cale:Drew』に収録されている『Laburnum』も、これまで紹介してきたポストロック同様、圧倒的な空間の広がりを持っている。

この曲の素晴らしさは、「冷たさ」と「温かさ」のコントラストにある。

重く響くベース音は、トリコたちが迷い込んだ巨大な遺跡の石造りのような、無機質で冷たい圧迫感を感じさせる。しかし、楽曲全体を包み込む雰囲気はどこまでも優しい。

その優しさの正体は、まるでバイオリンの弓弾きのように滑らかに聴こえるギターの「ボリューム・スウェル(バイオリン奏法)」と、機械的なデジタルエフェクトでは決して出せない「アナログディレイの微細な揺らぎ」だ。

3ピースバンドという音数の少なさを全く感じさせないこの有機的な温もりが、冷たい遺跡の中で生まれた奇跡の絆を、極上のサウンドスケープとして描き出している。

奇跡の揺らぎを直挿しで極限まで引き出す「Sennheiser HD 599」の魔法

この『Laburnum』のアナログな温かみと空間の広がりを体感するために、今回僕が強く提案したいのが、当ブログの絶対的定番である開放型ヘッドホン「Sennheiser HD 599」だ。

空間の広がりを感じるためには開放型であることが必須だが、このヘッドホンの真骨頂は「中低音域を豊かに鳴らすウォームなチューニング」にある。音が非常に艶やかであり、デジタルではないアナログ特有の揺らぎや温度感を、これ以上ないほど見事に表現してくれるのだ。

さらに特筆すべきは、HD 599がインピーダンス50Ωという「鳴らしやすさ」を持っている点だ。一般的なパソコンやゲームのコントローラーに直接挿しただけでも、Jakobの重く響くベース音と、バイオリン奏法のような滑らかなギターの重なりを、一切のパワー不足を感じることなく鼓膜へ届けてくれる。

アンプという機材のハードルなしに、HD 599の豊かな響きを直挿しで味わった時、あなたは本当の意味でトリコと少年の息遣いを耳元で感じることになるだろう。

おわりに

システムに縛られた冷酷な世界で、偶然外れた装具が生み出した小さな奇跡。

『人喰い大鷲のトリコ』をプレイした後に、ふと目を閉じてJakobの『Laburnum』を聴いてみてほしい。

アナログディレイの優しい揺らぎの中で、不器用で巨大な大鷲が、少年の頬にすり寄ってくるあの温かな情景が、きっと鮮やかに蘇ってくるはずだ。

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