『アサシン クリード オリジンズ』世界七不思議の頂へ――小さな蓮が灯した光

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夕暮れのアレクサンドリア大灯台を背に、遺跡の道から手を差し伸べる探検家姿のアリア Music × Game

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この記事には『アサシンクリードオリジンズ』のメインクエスト「アヤ、女神の刃」に関するネタバレが含まれます。まだ物語を進めていない方は、ぜひこのクエストをクリア後に戻ってきてください。この景色は、最後まで旅をした人だからこそ見える景色だと思っています。

アレクサンドリアの海に、一つの塔が立っている。 空へ向かって真っ直ぐに伸びる白い壁。その頂では、夜の地中海を進む船を導くための火が、赤々と燃え続けている。

ファロス島の大灯台。 かつて実在し、今はもう見ることのできない「世界七不思議」の一つだ。 『アサシン クリード オリジンズ』の世界で初めてこの塔を目にしたとき、僕はしばらく海の向こうを眺め続けていた。

ピラミッドとは違う。 アヤたちが生きる時代において、この大灯台は遺跡ではないのだ。港を照らし、船を導き、アレクサンドリアの夜を支える現役の施設として、そこに息づいている。 僕たちにとっては遠い伝説でも、アヤにとっては、今夜登らなければならない塔である。

『アサシン クリード オリジンズ』の夜のアレクサンドリアにそびえるファロスの大灯台
夜の港にそびえる、世界七不思議の一つ。今は失われた大灯台が、この世界ではまだ光を放っている。

今回は、この失われた大灯台の情景へ、Caspianの『Ghosts Of The Garden City』を重ねてみたい。 静かに始まり、やがて巨大な波となって押し寄せる音。その波の先で、一人の女性が誰よりも高い場所へ立つ。 そんな、ある夜の話である。

アリア
アリア

世界七不思議のいわゆる古代の七不思議ってやつだよね?!アタシ、結構こういうの好きなんだしー!そのうちの大灯台が今回のテーマね。

海の上に立つ、世界七不思議

ファロス島の大灯台は、紀元前280年頃に完成したとされている。 高さは100メートルを超えていたという。日本列島でようやく弥生文化が広がり始めた頃、地中海の沿岸には、すでにこれほど巨大な石造建築が海を見下ろしていたのだ。そう想像するだけで、少し眩暈がする。

大灯台は、王の権力を誇示するためだけの記念碑ではなかった。アレクサンドリアの港へ向かう船を導く、航海のための重要な施設でもあったのだ。 1世紀の歴史家フラウィウス・ヨセフスは、その火が300スタディア(およそ55キロメートル)先から見えたと記している。

どこまでが事実で、どこからが伝説なのか。 今となっては、確かめるすべはない。それでも、夜の海を進む船から見れば、暗闇の向こうに浮かぶあの火こそが「アレクサンドリア」そのものだったのだろう。

大灯台はその後、長い時間を海の上で生き続けた。しかし、度重なる地震によって大きな被害を受け、14世紀頃にはその姿を完全に失ったとされている。 今、同じ場所に立っても、あの塔を見上げることはできない。

だからこそ『アサシン クリード オリジンズ』で海上の大灯台を目にすると、不思議な感覚に陥るのだ。 復元された古代建築を見ているはずなのに、どこか、失われたものと「再会」したような気がしてくる。 そこではまだ、塔が立っている。 頂では、火が燃えている。 世界七不思議が、まだ伝説になる前の姿で。

海に囲まれたファロス島と大灯台を遠方から望む『アサシン クリード オリジンズ』の風景
海の向こうに立つ、アレクサンドリアの道標。アヤにとっては現役の施設でも、僕らにとっては伝説の建造物である。

アヤにとって、それは伝説ではなかった

『アサシン クリード オリジンズ』の舞台は紀元前1世紀。大灯台の完成から、およそ230年後の世界である。

クフ王のピラミッドへ足を踏み入れる主人公バエクは、僕たちプレイヤーと少し似ている。 遥か昔の人々が造った巨大建築を前にして、その暗闇の奥へ進んでいく。自分たちよりずっと古い時代の記憶へ、深く潜り込むような感覚だ。

けれど、大灯台は違う。 アヤの時代、その塔はまさに港を照らしている最中だ。 船はあの火を目印に進み、人々は海の上にそびえるその姿を、アレクサンドリアの「日常」として見上げていた。

僕たちは世界七不思議の中へ入れることに胸を躍らせる。 一方のアヤは、守備兵の目をかいくぐり、任務を果たすために前だけを見据えている。 観光ではない。歴史の見学でもない。 彼女にとって大灯台は、敵が待ち受ける現役の施設であり、命を懸けて越えなければならない戦場だった。

僕たちにはもう触れられない建築が、アヤの前では生々しく生きている。 この「時間のずれ」にこそ、『アサシン クリード オリジンズ』で古代世界を歩くロマンが詰まっているのだ。

大灯台を登るアヤ

メインクエスト「アヤ、女神の刃」で、カエサルはファロスの火へ薬品を投じ、炎の色を変えて艦隊へ合図を送るよう命じる。 その薬品を託されたのは、バエクだった。

だが、大灯台へ向かう直前、アヤは薬品を自分へ渡すよう求める。 カエサルは、女にはできないと思っている。アヤはそうバエクへ伝える。 バエクは黙って薬品を彼女へ投げ渡す。

ここで、操作キャラクターがバエクからアヤへと切り替わる。 燃える船の帆柱を渡り、海へ落ち、岸まで泳ぐ。 敵兵の待つ塔へ潜入し、内側を駆け上がる。 そして最後に、頂の火を守る者と対峙する。

いつも操作してきたバエクではない。アヤが、この塔へ挑むのだ。 この切り替わりには、単に「別のキャラクターを動かす」という以上の熱がある。

アヤはバエクの妻であり、クレオパトラに仕える戦士だ。そして物語の先では、後のアサシン教団へとつながる「隠れし者」を、バエクとともに築き上げることになる。 決して、誰かに守られるだけの人物ではない。自分の判断と刃で、歴史の中を切り拓いていく人物だ。

それでも彼女は、「女だから」という理由だけで、任務を果たせない者として見られている。 だからアヤは、世界七不思議の頂へと向かう。 言葉ではなく、自分の手で答えを示すために。

ファロスの大灯台の頂上で燃える炎とアレクサンドリアの夜景
アヤが目指した大灯台の炎。この光の色を変え、遥かな海へ合図を送る。
アリア
アリア

アヤってめっちゃカッコいいよね!?バエクってすごく信頼しててさ。確かあの時「女王こそお前にふさわしい」って言ってんの。それでアヤが話したら無言で投げて薬品渡すんだよね。アヤとバエク、めっちゃカッコいいーって思ってプレイしてたなー!

小さな蓮(Tiny Lotus)

大灯台の中で、敵兵たちはアヤを侮る。 英語版では、兵士の一人がこう叫ぶ。

“Someone crush that tiny lotus.” (誰か、あの小さな蓮を潰せ)

日本語版では「あの女を仕留めろ」と訳されているため、「小さな蓮」という言葉は英語版だけに残された表現だ。 さらに、頂へ続く道を守る巨漢の兵士も、アヤを一人の戦士として見ようとはしない。彼女を性的に値踏みし、自分のそばに置いてやってもよいと嘲笑う。

カエサルには、女だから無理だと思われる。 兵士には、小さな花のように潰せると思われる。 守護者には、戦士ではなく、所有できる女として扱われる。

それでもアヤは、自分の強さを語らない。 目の前の兵士を退ける。守護者を倒す。そして、ただ黙々と上へ進む。 やがてアヤは、誰もが見上げる大灯台の頂へ辿り着く。

薬品を火へ投じると、炎は鮮やかな緑へと変わる。 その光は暗い海を渡り、遠く離れた艦隊へと届いていく。 彼女を侮った者たちの声は、もう遥か塔の下にある。 頂に残るのは、アヤが灯した光だけだ。

アリア
アリア

何で英語版の台詞まで調べてんのよ(笑)。でも「Tiny Lotus」って言われたり、最後にはアレクサンドリアから贈られた娼婦みたいなことまで言われたりしてさ。アヤも「さすがの私も傷つく」って言い返すのが最っ高クールだったね!

「Ghosts Of The Garden City」が持つ高揚感

この情景に、僕はCaspianの「Ghosts Of The Garden City」を重ねたい。 2009年のアルバム『Tertia』に収録された、7分を超えるインストゥルメンタル曲である。

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曲は、深い残響をまとった静かなギターから始まる。 音はまだ遠い。暗い海の向こうに、大灯台の輪郭だけがぼんやりと浮かんでいるかのように。

けれど、曲が進むにつれて小さな脈動が生まれる。 リズムは少しずつ歩幅を広げ、ギターの層は厚みを増し、低音の重心も深く沈み込んでいく。 それは、アヤが塔を一段ずつ登っていく姿と見事に重なる。

彼女は、突然強くなったわけではない。最初から持っていた確かな強さを、一歩進むたびに目の前の者へ示しているだけだ。 この曲も同じだ。 静かな冒頭にあった音が消えるのではない。後から加わる音をすべて抱え込みながら、やがて巨大なうねりへと育っていく。

そして終盤、音が大きく開ける瞬間がある。 僕にはそれが、アヤが最後の扉を抜け、地中海の強い風を受けながら頂の火へ向かう瞬間、それが強い高揚感に聴こえるのだ。

女だから無理だと言われた者が、誰よりも高い場所へ立つ。 「小さな蓮」と呼ばれた者が、世界七不思議の頂で戦いの合図を灯す。

だから僕は、この大灯台に「Ghosts Of The Garden City」を重ねずにはいられなかった。

音が過ぎ去ったあと

「Ghosts Of The Garden City」が印象的なのは、最高潮へ達する瞬間だけではない。 巨大な音の波が通り過ぎたあと、残響はゆっくりと遠ざかっていく。 勝利を声高に叫び続けることはない。そこに何かが起きたという事実だけを残して、音は彼方へ消えていくのだ。

その余韻は、大灯台から放たれた緑の光に似ている。 火のそばに立つアヤの手を離れ、光は暗い海を渡る。彼女の姿など見えないほど遠くにいる者たちへも、合図だけは確かに届いていく。 一人の決断が、遠くの戦場を動かす。

音が過ぎ去ったあとも、僕の中にはあの光が静かに残るのだ。

「Ghosts Of The Garden City」には、静かな残響が広がる序盤、音の層が増しながら塔を登るように高まる中盤、そして大きく開けたあとに余韻を残す終盤がある。 ゼンハイザー HD 599でこの曲を聴くなら、その三つの変化を大灯台の情景と重ねて味わいたい。

開放型ならではの自然な広がり

HD 599は開放型ヘッドホンだ。音を密閉された空間へ押し込めず、自然な広がりを感じやすいため、冒頭のギターにかかった深い残響を追いやすい。 遠くに立つ大灯台と、その周囲に広がる夜の海。まだ輪郭しか見えない情景が、音の余白の中からゆっくりと立ち上がってくる。

中域を自然に追えるバランス

この曲では、静かな旋律を土台にしながら、リズムとギターが少しずつ重なっていく。HD 599の穏やかな音のバランスは、最初に現れた旋律を見失わず、曲が大きなうねりへ育っていく過程を追う助けになる。 アヤは突然強くなるのではない。一歩ずつ登りながら、初めから持っていた強さを示していく。その変化を、音の積み重なりとして聴きたい。

景色の前に留まり続けるための装着感

大きなイヤーカップと柔らかなイヤーパッドは、7分を超える曲を最後の残響まで落ち着いて聴く助けになる。 この曲は、最高潮だけを切り取るのではなく、音が遠ざかり、静けさが戻るところまで聴いてほしい。大灯台から放たれた光が海の向こうへ消えていくように、その余韻まで景色の前に留まり続けるための優しい装着感だ。

香り|ブルースイレン――決して侮るべきではない花

もし、この夜に一つの香りを重ねるなら、僕は「ブルースイレン」を選びたい。 学名は Nymphaea caerulea。 「ブルーロータス」「ナイルの青い蓮」「エジプシャン・ロータス」とも呼ばれる水生植物だ。

大灯台が実際にブルースイレンの香りで満たされていた、というわけではない。これは史実の再現ではなく、アヤという人物を「香り」へ置き換えるための選択である。

水面に浮かぶ青い花。 静かで、柔らかく、触れれば簡単に傷ついてしまいそうに見える。 けれど、その根は冷たい水の底に、しっかりと張られている。

兵士が口にした「小さな蓮」という言葉は、アヤを弱い者として扱うための侮蔑だった。 ならば、その花をこちらから拾い上げたい。

小さいから、弱いのではない。 美しいから、守られるだけの存在なのでもない。

僕がブルースイレンへ重ねたいのは、単なる女性らしさではない。 美しく、静かで、決して侮るべきではない「アヤ」の姿そのものである。

アリア
アリア

小さくても蓮って言っても蓮はエジプトにおいては神聖なものって感じがするよね。そう考えるとアヤにすごくピッタリな気もしちゃうね。

初めて試すなら
ブルースイレンやブルーロータスの天然香料は、少量でも非常に高価なことがある。この記事のために、無理に精油やアブソリュートを一本購入する必要はない。 まずは店頭のテスターをムエットで試すか、ウォーターリリー系のフレグランスで、水辺に咲く青い花の印象を重ねてみるのもよいと思う。 ただし、代替品はブルースイレンそのものの香りではない。あくまで、今回の情景を楽しむための演出だ。 芳香用途の製品を使用する場合は、製品表示に従い、ムエットやアロマストーンへごく少量。肌への直接使用や飲用は避け、換気しながら楽しんでほしい。

緑の光は、海を渡る

もう一度、夜のファロス島を見上げてみる。

海には燃える船がある。 塔の内側には、アヤを侮った者たちが倒れている。 そのすべてを背にして、彼女は世界七不思議の頂へ立つ。

カエサルには、女だから無理だと思われた。 兵士には、小さな蓮と呼ばれた。 それでも、アヤは登り切った。

静かに始まった「Ghosts Of The Garden City」は、やがて巨大な波となり、その熱を遠い残響へと変えていく。 そして大灯台には、緑の火だけが残る。

約55キロメートル先まで見えたと伝えられる、海を導くための光。 その夜だけは、船の行き先ではなく、一人の女性が歴史の中で進む道を示していたのかもしれない。

小さな蓮は、もう誰にも見えない。 それでも、彼女が灯した光は、暗い海の向こうまで確かに届いている

ファロスの大灯台の頂上からアレクサンドリアを見渡すアヤ
「小さな蓮」と侮られたアヤは、ついに世界七不思議の頂へ立つ。その光は、海を越えて進むべき道を示した。

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